「志命」を出す その15

ジョーイ編 その6

ジョーイはゆっくりと話し始めました。

「私は、日本の横浜ということころで生まれました。

凄く裕福でもなく、かといって食べ物に困るほどの貧乏でもなく・・・・。

母方の祖父母と共に、年の近い弟を含め家族5人で暮らしていたのです。

 

日本では何処にでもある平凡な中流家庭でした。

親の愛もしっかりと感じていましたし、私の世界は平和だったと思います。

しかし、そんな世界を一変する出来事が起こりました。

弟が幼くして原因不明の病気を発病したのです。

 

肉体的に何かあるのではなく、私の弟は精神的な病でした。

しかし、それを治す特効薬のようなものは無いと思います。

弟は天真爛漫で活発な子供でした。

まだ小学生の低学年であった弟が、社会的に何か負荷を感じて精神を病むなんてことは考えられません。

 

突発的に弟はその病を発病したのです。

後にインターネット調べてわかったのですが、

この病は先天的なものではなく、遺伝的なものでもなく、

ある一定の割合で、ランダムに起こるらしいのです。

 

たまたま弟が選ばれたかのようにその病にかかったのです。

私の世界は一変しました。

幼い弟に対処法の分からない病。

両親も祖父母も弟にかかりきりになります。

 

特に母親は何日も眠れないなんてことはざらでした。

私はどうしたら家族や母親の役に立てるだろう?

そう考えるようになりました。

私は幼い時は大人しくて神経の細い子供だったらしいのです。

 

しかし、そんな甘い事を自分に言っている場合ではなくなりました。

私は強くならなくてはいけない。

本能でそう思いました。

家族を守れる強い人間に。

 

家族を守るために、誰にも負けてはいけない・・・・。

私は親に無理を言わなくなりました。

そして手をかけさせないように、自分で勉強もするようになりました。

必死で背伸びをしたのです。

 

しかし、幼い私にもその反動は来ました。

・・・・・・私は、モノを盗むようになったのです。」

 

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リッツ(安西律子)

「武学」を学んではや10年以上・・・・・。 その間に仕事を辞め、結婚をし、 現在は子育て真っ最中です。 私自身が観た視点で、「武学」や、それに関連することなどを、 面白おかしくわかりやすく、お伝えできたらと思っております。 よろしくお願いいたします。

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