礼に始まり礼に終わる

 

レノンリーの最初の武術の師匠であるK老師は、詠春拳の達人でした。

詠春拳といえば、映画「イップマン」で非常に有名ですね。

小さくて力の弱い女性でも、一撃必殺で相手を倒すことのできる技。

非常に強力な武術です。

 

しかし、K老師は一向に技を教えてくれる気配はなく、気の遠くなる時間、

レノンリーは道場の隅で立たされることになりました。

レノンリー「俺は強くなりたいんです!」

K老師「んじゃ、強さってどんな強さ?」

 

あるとき業を煮やしたレノンリーは、技の伝授の為に、

K老師に自分は強くなりたいので武術を教えてほしいと言います。

レノンリー「ストリートファイトでだれにも負けないくらいです!」

K老師「んじゃ、女性や子供でもいいの?」

 

レノンリー「え? いや、そうじゃなくて、総合格闘技のチャンピオンレベルの・・・・・。」

K老師「おまえ自身の強さの定義が出来ていないのに、だれと戦うかなんて考えられるわけがない。

そもそも世界で一番強い男はアメリカ大統領だと思わん?

彼一人の電話で軍艦が動くんやで? 絶対に勝てないやん?

それとも、お前が次期アメリカ大統領になる?」

 

レノンリー「・・・・・・・・・・・・・。」

K老師「唯一、アメリカ大統領に勝てるとしたら、

お前が、自分を殺しに来た相手と友達にできる事じゃないか?

そして、友達の輪が広がったら、だれもお前を倒しに来ないぞ?

そしてお前が困ったら、世界のみんなが助けてくれる。」

 

K老師「おまえが求めている強さは、武術の技術なのか?

それとももっと人間の根源としての強さなのか?

世界のみんなに助けてもらうのに、逆に武術の技術は必要じゃないかもな。

ケンカで強くても友達はできない。

【ありがとう】とか、【感謝してる】をちゃんと伝えれるヤツの方がよっぽど友達出来ると思わん?」

 

レノンリー「当時の俺は、老師(せんせい)の言っていることは良くわからなかった。

だけど、老師は「礼に始まり礼に終わる」って言葉をよく言ってた。

だから、俺は弟子の中で一番下っ端やったけど、

練習前に早く来て掃除して、最後まで残って掃除する。

それを始めた。」

 

今にして思えば、老師(先生)はそれを見てたと思う。

そこから少ししてから、先生からちょくちょく技を教わるようになった。

兄弟子達は皆辞めてしまったけど、俺は最後に残った老師の弟子やねん。

俺が学んだ武術の師匠は全員そうやけど、

 

武術を学ぶ精神は、出来ていて持っていて当たり前。

「武術」は老師(せんせい)から教えてもらわないと、何も学べない。

「礼」の状態が出来ているかいないか。

武術を教えるのに値する人間かどうか。

K老師はずっと俺を待っていてくれた事に気が付いた時、

この人から伝えてもらえるに足りる人物になる決意をした。」

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リッツ(安西律子)

「武学」を学んではや10年以上・・・・・。 その間に仕事を辞め、結婚をし、 現在は子育て真っ最中です。 私自身が観た視点で、「武学」や、それに関連することなどを、 面白おかしくわかりやすく、お伝えできたらと思っております。 よろしくお願いいたします。

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