「志命」を出す その6

O皮氏編 その2

O皮氏がゆっくりと歩いてきて、スピーチ台の前に立ちました。

O皮氏「今日ここにお集りの皆様。

そして、宇宙中継で観ておられる皆様。

そうでない方々も・・・・。

 

私を世界大統領に選んでいただいて、ありがとうございます。

私がこの「場」に居る事を、一番信じれていないのは、

他ならぬ私自身です。

何故ならば、私は世界大統領など、たいそうな名前を頂ける人間ではないからです。

 

皆さん、しばし私の昔話にお付き合いください・・・・・。」

そう言って、彼は自分の生まれた環境や家族の事を話し始めました。

O皮氏は古い歴史を持つ一族の末裔でした。

家も裕福で金銭面で困ることは無かったそうです。

 

彼は、年の少し離れた妹とはとても仲良くしていたのですが、

両親とは上手くいっていませんでした。

彼の両親は年齢の差が開いており、年若い父親は、

彼が物心着いた頃から、母親をかえりみなかったそうです。

 

二人の顔色を窺うようになった子供時代。

唯一の救いは祖母との時間でした。

しかしその祖母も、彼がまだ幼いころに亡くなってしまい、

彼は幼くして本当の気持ちを言える人を失ってしまいました。

 

親の期待に応えるため、彼は一生懸命勉強し、

運動も頑張り、跡取りとして申し分のない人物になろうと頑張りました。

妹は孤独にならないように、大切に面倒を見ました。

そうすれば、両親はきっと仲良くなってくれる。

 

しかし、両親の間の事を子供が解決できるはずもなく、

家を守るために二人は一緒に居ますが、ただそれだけでした。

繊細な彼はとても傷つき、そしてとても悲しみました。

自分がどんだけ頑張っても、大好きな両親の溝は埋まらない事。

 

自分はどんだけ頑張っても報われないのではないか・・・?

彼は絶望に近い孤独感をずっと抱えながら、それでも頑張り続けるしか出来ませんでした。

O皮氏「世界には、両親がいない子供たちの方が多いはずです。

ですので、私の抱えた孤独は些末な事に思えるでしょう。

 

お金、家、世間体・・・・・・。

そんな見てくれにこだわっている両親の姿に、徐々に疑問を抱くようになりました。

特に、お金って一体何なんだろう・・・・?

と本気でそう思うようになったのです。」

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リッツ(安西律子)

「武学」を学んではや10年以上・・・・・。 その間に仕事を辞め、結婚をし、 現在は子育て真っ最中です。 私自身が観た視点で、「武学」や、それに関連することなどを、 面白おかしくわかりやすく、お伝えできたらと思っております。 よろしくお願いいたします。

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