今回は、「認知的不協和(認識の不協和)」についてお伝えします。

「認知的不協和(認識の不協和)」は、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱された理論です。

心の中に2つの矛盾もしくは対立する考え方が入り込むと、心の均衡が崩れて気が動転(混乱)します。
もしくは、想定外の出来事が起こった時や慣れない環境や状況に陥った時も同じようなことが起こります。

この混乱した時に生じる不快な心理状態のことを認知的不協和

と言います。

逆の状態・・・

混乱していない状態を認知的協和

と言います。

代表的に言われている例がタバコで、タバコを吸うという行為に対して「タバコを吸うと肺がんになりやすい」という「新しい事実」が提示されます。

すると、行動と事実の矛盾に対する不快感が起こり、タバコをやめるか、事実を否定することで矛盾を解消しようとします。

しかしタバコには依存性があり、やめるのは困難です。
したがって、事実の方を否定して矛盾を解消しようとします。

そこで、
「タバコを吸っていても長寿の人もいる」や「肺がんよりも交通事故で死亡する確率の方が高い」といった理屈を考えます。

しかし認知的不協和の状態にある人はその時点ですでに結論ありきで考えているので、論理的に考えていない可能性もあります。

認知的不協和

認知的不協和が起きると、不快な心理状況を取り除いたり少なくしたりするために行動や態度の変更が必要となり、その結果心理的なバランスを保とうとします。
(不協和→協和)

認知的不協和→認知的協和、つまり不協和状態を取り除くための心の仕組みとしては
次の3つがあります。

①スコトマ(自己に不利益(と思う)情報を受け入れないようにする)
私たちが信じていることと矛盾する情報に接すると、潜在意識がスコトマ=盲点(反対の情報により自らを傷つけないように、自分に不利益と思う情報を締め出す)を作り上げます。

スコトマは、私たちが見たいものだけを見、聞きたいものだけを聞くように作用

します。

心にはそのような仕組みがあるということを気付くことが必要であるということです。

例えば、
電気自動車を購入したいと思った場合、電気自動車の情報ばかりが入ってくるように感じるようになります。
これは、電気自動車以外の・・・ハイブリッド車でも良い性能の車があるなどの情報を自動的に締め出しているからです。

②正当化
自分が馬鹿げていると見られないために~つまり自分は正しいと見られるために~自分を支持するまたは正当化してくれる情報を集めようとします。

例えば、
電気自動車を購入した際には、その車の良い部分だけを見ようとし、悪い点は全て締め出してしまいます。
航続距離が短いのは、電気自動車の構造上仕方なく、それよりも給電スタンドが全国各地にあるではないか、ガソリンを使わなくて済むので家計にやさしい、などです。
  
私たちは意思決定する前に関連情報を調査し、評価します。
この段階までは通常、新しい情報や経験をオープンに取り入れます。
しかしいったん意思決定すると、自分の信じていることを正当化する情報や事実のみを集め始める、ということです。

先ほどの電気自動車で言えば、

車の購入を検討・・・カタログを取り寄せたりショールームに行って候補を決める
   ↓
電気自動車に決定・・・電気自動車以外の情報を締め出し購入する具体的な車種決定(スコトマ)
   ↓       
電気自動車購入・・・購入した車の良いところだけを見る(正当化)

という流れとなっています。

③実現確信原則
正当化するもうひとつの原則です。
「自己実現預言」とも言われ、自分の信じたことに固執するとそれがプラス面でもマイナス面でも、その信じたことが実現するよう創造的に働きかけるというものです。

例えば、
「あいつはいつも私を怒らせる」と信じているとすると、実は「私を怒らせる」ように「あいつ」にアプローチしていくのは自分である、ということです。
つまりこの場合で言えば、「私は、あいつを、いつも私が怒るように仕掛けている」ということになります。

これらの考え方を理解すると、次のようなことも理解が深まります。

・自分に協力しない人々は自分のことを嫌いだからではない
→彼らもしくは自分がスコトマを持っている可能性がある

・人は知恵や経験を積めば積むほど新しい考え方を受け入れるのが難しくなる
→斬新なアイディアが出にくく、硬直化しやすい

「新しい考え方を受け入れるのが難しくなる」は歴史で何度も繰り返されています。
  
例えば、
アメリカでは1880年頃、先進的な通信だった「電報」の独占をしていたのが「ウェスタンユニオン」という会社です。
その当時アメリカでもっとも力と金のある企業と言われていました。

ウェスタンユニオンにある時「投資した新発明の製品特許を買わないか」との話が投資家から持ちかけられます。
既にアメリカ中に「電報」網を張り巡らしていたので、この製品を「電報網に少しの改造を施すだけ」で接続することができました。

ところが、ウェスタンユニオンは「商業的な価値はない電気製のおもちゃを我が社でどう利用しろと?」と一笑に付しました。

その後、この新発明の製品特許は特許を持っている人が今の「AT&T」という会社を作り、後にアメリカ最大の会社となります。

新発明の製品特許とは・・・

「グラハム・ベルの電話」でした。

認知的不協和→認知的協和、つまり不協和状態を取り除くための方法は、

・「考え方を変える」→行動に考え方を合わせる
・「行動を変える」→考え方に行動を合わせる
・「合理化・正当化する」→考え方も行動も変えずに解釈を変える

となります。(※必ずしもどれか1つの方法を選択するだけではないことに注意してください。)

この機能が

良い方向に向かえば「成長」
悪い方向に向かえば「防衛反応」

となるのです。

自分の状態の改善を行う場合には

「あえて認知的不協和状態を創り出す」

ということも必要です。


 

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